妊娠する前にきちんと健診を受けて不安を解消しておくことが大事であることは言うまでもありません。自分では特に気になることが無くても普段から定期健診を受ける習慣を持ちましょう。
それでも問題が起きたらどうするか。そうなんです。妊娠中だからこそ起こる口の中の異変だってあるんです。
重い歯周病にかかった母親は、早産や低体重児を産むリスクが高いことが報告されています。これは、歯周病にかかった歯周組織が作り出す“炎症性物質”が血液中に入り込み、子宮の収縮に関係しているためだと考えられています。また、歯周病菌の毒素が歯周ポケットから血液中に入り込むことで、血液の“炎症性物質”を増やすことも関係していると考えられています。
天理市では、平成25年4月1日以降妊娠届者に、妊娠期間中にのみ使用できる妊婦歯科健康診査無料健診票を配布しています。妊娠中は口の中の状態が変化しやすいため、むし歯や歯周病にかかりやすく、また最近は歯周病と早産・低体重児との関係も指摘されています。電話で予約を取っていただき、母子手帳と市役所から配布される健診表を持参のうえ来院してください。痛む歯が無くても自覚症状がない初期のむし歯や歯周病を発見できます。
子宮が大きくなるにつれ胃が圧迫され、一度に必要な量の食事が採れなくなり、「ちょこちょこ食べ」や、「だらだら食べ」が増えてしまいます。
また、酸味の強い食品や、市販の清涼飲料水、さらには甘味菓子などを飲食する回数が増える傾向にあるようです。
こうした食習慣の変化が歯やハグキのトラブルを招くことが知られています。
胎児の発育には欠かせない女性ホルモンの変化ですが、歯やハグキにとっては、必ずしも良いことだけではないようです。
女性ホルモンが増えると、全身の血管透過性が高まります。血管透過性とは、血管の内外で水分や物質が行き来することを指しています。
ハグキで血管透過性が高まると、わずかな細菌増殖の刺激でもハグキは容易に腫れあがってしまうのです。またある種の歯周病菌が、女性ホルモンによって発育を助けられ、口腔内でその数を増やすことがわかっています。これも、ハグキにトラブルを起こす原因の一つになります。
唾液には、消化を助ける働きのほかにも食べカスを洗い流す「洗浄作用」、酸性に傾いたお口の中を中性に戻す「緩衝作用」、病原微生物に抵抗する「抗菌作用」などの大切な働きがあります。
また、唾液に含まれるカルシウムが歯に取り込まれて「再石炭化」することで初期のむし歯の修復に役立っています。
妊娠中、この唾液に変化が生じて、むし歯になりやすい状況を作っていることが知られています。
妊婦の一部には唾液量が減少する傾向がみられ、洗浄作用や抗菌作用が弱くなり、むし歯の原因菌が増えることにもつながります。
さらに、一部の妊婦では唾液が酸性側に傾いており、そうした変化でもむし歯が生じやすくなると考えられます。
個人差のあるつわりですが、吐いてばかりで脱水症状になり、点滴が必要になるケースでさえあります。歯ブラシを口に入れるだけで吐き気がして、歯みがきどころではないといった声も聞かれます。
妊娠中期以降は日常の動作が緩慢となり、歯みがきも面倒になりがちです。歯みがきの回数が減ったり、時間が短くなるなどが原因で妊婦にむし歯や歯周病が多くなると考えられています。
また、つわりで胃液(強酸性)の逆流が起こり歯の正面が溶ける歯牙酸蝕症の危険性が高まります。
母子手帳には妊娠の経過が記録されています。歯科の治療を行う上で必要な情報ですので、必ず持参し提示しましょう。 |
産科の主治医には歯科治療を受けることを前もって伝えておきましょう。 |
歯科でのレントゲン撮影は腹部から離れており赤ちゃんへの影響はほとんどありませんが、念のため防護エプロンで腹部を覆ってもらいましょう。 |
主な症状、歯科に対する要望を歯科医師に詳しく伝えましょう。 |
歯科医師に自分からも妊娠の状況を伝えましょう。 |
妊娠中期(5ヶ月~7ヶ月・16周~28週)にはほとんどの治療が可能です。抜歯などの外科処置については、歯科医師とよく相談しましょう。 |
妊娠中の薬の服用には慎重であるべきですが、痛みなどの症状がひどい場合は、我慢することがかえってお腹の赤ちゃんに悪い影響を与えることがあります。安全に使える薬もありますので歯科と産科の医師とよく相談した上で、処方された薬を指示を守って飲むようにしましょう。 |